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【バックグラウンド】 1976年、アメリカが抱える最大の問題の一つであったベトナム帰還兵、その病んだ帰還兵 "トラビス・ ビィクル" (ロバート・デ・ニーロ)と同じく病んだ大都会ニューヨークをオーバーラップさせる事で、時代を見事に描ききった名作品 "TAXI DRIVER" 。主人公 が着用するタンカージャケットの右胸にはパラシュートとウイングがデザインされた楕円形のパッチが、左袖にはヘルメットをかぶったキングコングがデザインされたパッチがつけられ、そして背中には主人公の役名 "BICKLE.T" がステンシルされていた。 主人公は孤独なベトナム帰りの元海兵隊員という設定で、右胸に縫いつけられた楕円形のパッチは、M.C.(海兵隊)フォース・リーコン(部隊偵察隊)パッチであり、この部隊は海兵隊の中のエリート中のエリートで全員が空挺の資格を持ちベトナム戦で特殊作戦を遂行したいわば戦争のプロフェッショナル集団であった。そして左袖につけられたキングコングがデザインされた"KING KONG COMPANY" パッチは主人公が所属したM.C.フォース・リーコンのチームパッチという設定である(実在はしなかったが)。主人公にとって、このタンカージャケットは病んだ都会ニューヨークで生きていくための時に戦闘服ともいえるものであり、つけられた2枚のパッチは、除隊後であっても彼の精神的なアイデンティティが、いまだ海兵隊、フォース・リーコンにある事を意味し、背中の"BICKLE.T" のステンシル文字は戦場におけるネームタグを想像させる。この名画"TAXI DRIVER"において主人公のキャラクターと一体になったタンカージャケットの存在感は "大脱走"におけるマックイーンの着るA-2に勝るとも劣らぬ物があり、今あらためて数多くあるミリタリィジャケットの内より、この映画のためにタンカージャケットを選んだスコルセ-セ監督、ルース・モーレイ氏(衣裳デザイン担当)のセンスに心から敬意を表したい。 |